タイ人は「みんな一緒に」が大好き

筆者がタイで中小企業の現地法人責任者だった時。事務職として採用した女性が「この会社は、事務職は制服ないのですか?」と聞いてきました。

私の会社は製造業なので、工場の現場作業者は決まった作業着があるのですが、事務職の制服はありませんでした。そこで私は「えっ?制服が欲しいの?」と聞いてみたところ、彼女は「うんうん」と力強くうなずきました。

その後、社内の事務職(女性が7割)に制服が欲しいかどうかのアンケートを取ったところ、なんと全員が「欲しい」という意見だったのです。

日本では、昭和のころはOLには制服があるのが普通でしたが、平成になったころからは制服は廃止され、それぞれの好みの服装で仕事をすることが当たり前のことになっていったと思います。私は日本人の感覚で、若い女性は自由な服装で仕事をして、おしゃれを楽しみたいものだと思っていたので、彼女たちの意見は意外でした。

そして事務職にも制服を導入し、それを着ることは強制ではなく自由としたのですが、結果的には全員が毎日制服を着て通ってくるようになりました。

会社の制服だけではなく、タイ人は普段の生活の中でも、同じ服を着ることが良くあります。

例えば、前の王様(ラマ9世)の誕生日には、街には黄色の服を着る人が溢れます。これは、前の王様が月曜日生まれであったので、月曜日の色である黄色が王様の色だからです。そのため王様の誕生日の前には、揃いの黄色いポロシャツを多くの店で売り出しています。(タイ人は生まれた曜日によって本人の色が決まっています。日曜は赤、月曜は黄色、火曜はピンク、水曜は緑、木曜はオレンジ、金曜は青、土曜は紫)。同じように、土曜日生まれの王女様の誕生日には多くの人が紫色のポロシャツを着ています。

この写真は、社内でレクリエーション大会を行った時のものです。

この時も制服とは別に揃いのTシャツを作りたいと人事マネージャーが言ったので許可したのですが、全員それを着て、とても楽しそうにゲームに興じていました。

タイ人は、このような社内運動会や忘年会・ソンクラン(タイ正月)のパーティー、社員旅行などを、とても楽しみにしています。こういった社内行事も、日本では昭和のころは盛んに行われていましたが、いまでは私的な時間までを会社のメンバーと過ごすことは、日本では嫌われる傾向が強くなり、多くの会社では廃れていると思います。しかしタイの人たちはこういった、会社の人たちと同じ服を着て同じことをすることで一体感を高めることをとても好みます。

ホフステードの6次元モデルの指標のひとつに、「個人主義・集団主義」の指標があります。

ここでいう「集団主義」とは、

・人々は集団に忠誠を誓う代わりに保護される

・雇い主と社員の関係は家族関係と同じく道徳的なものである

・人間関係が職務より優先される

といったものです。

この指標において、日本は欧米各国よりは集団主義よりに位置していますが、アジアの国の中ではインドとともに、最も個人主義寄りに位置しているのです。

つまり、アジアのほとんどの国の人たちは、日本人より集団主義で、集団の一員であることを個人の主張より大切にする人たちであるということなのです。

こういったタイの人たちの価値観や行動に接すると、私はとても懐かしい気持ちになると同時に、日本人である私たちの言動は、タイの人たちから見ると個人主義的で冷たいものに映ってしまっているのではないかという点に注意すべきだと感じます。

タイ人のこのような価値観を重んじ、宴会や運動会、旅行といったみんなで楽しめる機会を十分に用意すると同時に、日本人もその中に入って一緒に楽しむことによって、会社の一体感を醸成することが、会社のマネジメントがうまくいくために大切なことなのです。

中小企業診断士 池田真一郎

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